文責:教理研究院
注、真の父母様のみ言は「青い字」で、UCI(いわゆる「郭
グループ」)側の主張は「茶色の字」で区別しています。
2017年10月1日、当時、本部の家庭教育局副局長の立場にあった櫻井正上氏が「全国の牧会者の皆様へ」と題する書簡を発信しました。UCI(いわゆる「郭グループ」)を支持する人たちは、その書簡の内容をブログなどで拡散し、祝福家庭や二世青年層に誤った情報を広めています。この櫻井氏が発信した書簡の内容は、〝誤った摂理観〟に基づくものであり、注意が必要です。
私たちは、原理とみ言を中心に〝正しい摂理観〟をもち、真の父母様に対する「絶対信仰」によって、VISION2020勝利のために力強く歩みを進めなければなりません。
櫻井正上氏は、書簡「全国の牧会者の皆様へ」で次のように述べています。
「神の摂理の終着点は“真の家庭”であり、……“真の父母”の勝利圏は“真の子女”に相続されなければなりません。原理的に見るなら、“父”の伝統を受け継ぐ“息子”を立てることこそ“母”の最も本来的な使命であり、それを助けるのがカインの子女の務めではないでしょうか。……“神の摂理”の方向に向かってお母様を支え、共に歩むことが“子女の道理”ではないでしょうか?」
櫻井氏は、神の摂理の終着点は「真の家庭」であり、真のお母様は「“父”の伝統を受け継ぐ“息子”を立てること」が「“母”の最も本来的な使命であり、それを助けるのがカインの子女」としての祝福家庭の「務め」であると主張します。そのような「“神の摂理”の方向に向かって……歩むことが“子女の道理”」であると言うのです。上記、抜粋した内容が、櫻井正上氏が書簡で主張する〝摂理観〟の中心ポイントになります。
しかし、これは〝誤った摂理観〟に基づくものに他なりません。彼がそのように判断した根幹には、金鍾奭著『統一教会の分裂』や、郭錠煥氏の講演、櫻井正実氏の「祝福家庭特別セミナー」などの非原理的な言説の影響があったものと言えます。
(1)お父様が明確にしておられる「後継の秩序」に関する〝正しい摂理観〟
― お父様の他界後は、「お母様が責任を持つのです」
まず、『統一教会の分裂』(日本語訳)から、〝誤った摂理観〟を抜粋します。
「彼(注、文顯進氏)は1998年7月19日に30歳で世界平和統一家庭連合の世界副会長になる……この当時、統一教会の誰も創始者を引き継ぐ指導者としての文顯進を疑うものはいなかった」(59ページ)
「創始者のカリスマ伝授は、1998年から文顯進に試みられた。この試みは、統一教会の宗教的伝統(長子相続)と当時の状況に適合し、大多数の統一教会人はこれを認めた」(176ページ)
「韓鶴子は、創始者の他界直後……韓鶴子の母系血統、文善進……の母系血統による統一教会統治構想……」(231ページ)
「文顯進、文國進、文亨進、彼らは創始者の復帰された血統に生まれた『真の家庭』の息子たちだ。……全人類に接ぎ木される血統が、この三人の息子の血統に流れているというわけだ。ところが、韓鶴子と文亨進、文國進が共謀して文顯進を追放し、文國進と文亨進は韓鶴子が追い出した。……創始者の『種』を持つ三人の息子が、真の父母(韓鶴子)によって、宗教的価値が否定された以上、創始者の『種』は、息子ではない違う経路で万民に届けられなければならない。……韓鶴子は血統信仰に基づいた後継者選択を放棄した……」(239ページ)
これらの『統一教会の分裂』の主張は、お父様のみ言を根拠としていないばかりか、み言に反するものであり、〝誤った摂理観〟に基づくものです。
① 相続者としての〝後継〟の選択を、「息子だけ」と主張する誤り
『統一教会の分裂』の〝誤った摂理観〟を理解するために、以下、『マルスム選集』からお父様のみ言を引用します。
「先生が霊界に行くようになればお母様が責任を持つのです。その次には息子・娘です。息子がしなければなりません。息子がいなければ、娘がしなければなりません。後継する者が誰だということは既に伝統的に全て(準備が)なされています」(マルスム選集318-260。太字ゴシックとアンダーラインは、教理研究院による。以下、同じ)
「私(注、お父様)がいなくても、お母様の前に一番近い息子・娘が第三の教主になるのです」(マルスム選集202-83~84)
お父様は、お父様の他界した後、「お母様が責任を持つのです」と明言しておられます。その次には「息子・娘です」と述べておられます。そこには「娘」も含まれています。そして、〝後継〟の問題について、注目すべき点は「息子がいなければ、娘がしなければなりません」と語っておられる点です。
ところが、『統一教会の分裂』は、お父様のみ言を完全に無視して、〝後継〟の問題について、男の子女様だけを取りあげており、女の子女様を排除します。しかも、お父様の「血統」が、「文顯進、文國進、文亨進……全人類に接ぎ木される血統が、この三人の息子の血統に流れている」と述べて、まるで他の子女様には、お父様の血統が受け継がれていないかのように述べます。お父様の「血統」は、すべての子女様に受け継がれているのであって、このような主張は非科学的な〝珍論〟に過ぎず、かつ、他の子女様(特に、女の子女様)に対する〝差別的発言〟と言い得るものです。
お父様のみ言に基づけば、真の父母様の直系子女(息子・娘)は、すべて〝後継〟の選択の範囲にいるのであって、お父様は、後継する者は「三人の息子」だけであると述べておられるわけではありません。
『統一教会の分裂』は、現在、世界平和統一家庭連合の世界会長に立てられた文善進様を「韓鶴子の母系血統」であると定義していますが、これは誤った血統認識によるものです。
UCIを支持する人々の多くは、「血統」の概念を誤って捉える傾向があります。お父様は、男性と女性の両性の〝生命〟が関わって「血統」が生じることについて、次のように明確に語っておられます。
「生命を見ましたか? 生命に触ってみましたか? 生命体は見えるけど、生命は分かりません。触ってみることはできません。血統もそうです。血統は夫婦が愛するその密室、奥の部屋で結ばれるのです。そして、精子と卵子が出合って生命体として結合するとき、血統が連結されるのです」(「ファミリー」1995年3月号、22ページ)
「一人で血統が連結されますか? この血統は、男性の血だけでは連結できません。男性と女性が、一つにならなければなりません」(「ファミリー」2001年3月号、21ページ)
「皆さんが父母から受け継いだ命は、父の精子と母の卵子を受け継いだところから出発したのです。その卵子と精子が一つになったところに、愛によって根が生まれて発生したのが、皆さんの子女です」(「ファミリー」2007年3月号、7ページ)
お父様は、父母から子女への生命の連結、すなわち「血統」に対して、それは精子と卵子が一つとなることから出発したと、生物学的に述べておられます。ただし、精子と卵子の生物学的次元の指摘だけでなく、さらに深く考察され、「愛によって根が生まれて発生した」と〝愛〟を強調しておられます。
お父様は、平和メッセージで「生命と愛が合わさって創造されるものが血統です」(『平和神經』28ページ)、「血統は、父母が子女だけに与え得る特権中の特権です」(同、39ページ)と語っておられますが、血統は男・女による両性の「生命」を抜きにして生じることはありません。すなわち、「生命がなくても、愛がなくても血統は創造されません。愛、生命、血統のうち、その実りが血統なのです」(同、28ページ)とあるとおりです。
そしてまた、真のお父様は、女性も血統を持っていることを次のように明確に語っておられます。「母親の愛のゆえに、母親の生命のゆえに、母親の血統のゆえに〝私〟が生まれたということは否定できません」(「ファミリー」1999年11月号、30ページ)。このように、女性も血統を持っていることを知らなければなりません。
お父様が語っておられるように、「血統」は父と母の二人によるものです。父母から生まれてくる全ての子女は、父母からそれぞれ半分ずつの遺伝子情報を受け継いで生まれてきているのであり、父の「血統」は、〝男の子女〟にだけ受け継がれているというものではありません。事実、父によく似た女の子女が生まれることもあり、反対に、母によく似た男の子女が生まれることもあります。
『統一教会の分裂』の主張は、お父様のみ言に基づかず、自然界の事実とも異なる非科学的な〝誤った血統認識〟に基づいたものであり、〝女性差別〟的なものです。
したがって、『統一教会の分裂』が述べる「韓鶴子は血統信仰に基づいた後継者選択を放棄」したという主張は誤りである事実を知らなければなりません。文善進様は「韓鶴子の母系血統」というのではなく、真の父母様(真の父と真の母)の直系の子女様です。
お父様のご聖和後、お母様は、「息子がいなければ、娘がしなければなりません」「お母様の前に一番近い息子・娘が第三の教主になる」というお父様のみ言を忠実に実行しておられるのであって、「後継者選択を放棄」などしておられません。
②息子だけを「長子」と主張する誤り
「長子」に関するお父様のみ言を『マルスム選集』から引用します。
「尹博士、統一家において長子は誰ですか。(「孝進様です。」)孝進より先生の息子、娘です。12支派(のすべて)が長子なのです」(マルスム選集133-244)
1998年7月19日、真の子女様の三男である文顯進様が世界平和統一家庭連合の世界副会長に就任した出来事を、『統一教会の分裂』では「長子相続」と位置づけています。
お父様は、「長子」とは「先生の息子、娘」であると語っておられます。このお父様のみ言を根拠にすれば、すべての子女様が「長子」なのです。もし、文顯進様の世界副会長の就任が「長子相続」というならば、2008年4月18日、七男の文亨進様が世界会長に就任した出来事も「長子相続」であり、さらに2015年3月6日、五女の文善進様が世界会長に就任した出来事も「長子相続」であるとしなければならないでしょう。
ところが、『統一教会の分裂』は、文顯進様についてのみ「長子相続」としています。このように、文顯進様が家庭連合の世界副会長に就任した出来事のみを「長子相続」と主張することは、お父様のみ言に基づかない〝偏った認識〟によるものです。
すなわち、自分こそが長子であり、後継者なのだという〝恣意的な摂理観〟をもっているがゆえに、お父様のみ言と異なった〝誤った摂理観〟が生じたものと言えます。長子は顯進様だけではありません。お父様は、み言で「長子」は息子だけでなく、「先生の息子、娘です。12支派(のすべて)が長子なのです」と語っておられます。したがって、五女の文善進様も〝長子〟なのです。
③長男の文孝進様を〝無視〟する誤り
― すべての子女様は「長子」であり、かつ「長子圏」である
『統一教会の分裂』は、「文顯進、文國進、文亨進、彼らは創始者の復帰された血統に生まれた『真の家庭』の息子たちだ。……全人類に接ぎ木される血統が、この三人の息子の血統に流れている」(239ページ)といった誤った主張をしています。
真の父母様の息子は三人だけではありません。特に、子女様の中で一番重要な立場は、長男である文孝進様です。その方を意図的に排除しています。孝進様の血統が残っていることを無視してはなりません。
また、文孝進様は1984年11月3日、世界大学原理研究会(World CARP)の世界会長に就任しました。『統一教会の分裂』は、そのことについても触れていません。
真の父母様は、文孝進様を中心に、統一教会の二世たちを一つにする運動を展開されました。特に、1985年8月16日に「一勝日」という重要な儀式を行いました。「一勝日」で語られたみ言の重要な部分を、以下、『祝福』1985年冬季号から抜粋します。
「父母様の息子・娘たちが長子圏となり、統一教会の二世たちが次子圏となって、長子圏と次子圏を横的に展開する時代を迎えなくては、地上天国実現出発が不可能だというのです」(12ページ)
「このようなことをいつ決定するのでしょうか? 今日、統一教会の歴史において、このような決定をいつなしたかということが重要なことです。……入監以前に孝進君を立てて、二世たちを一つにする運動を展開させたのです。先生の長男としての立場で責任を持たせたのです。……父母様を中心にして一つになった基準の長子圏、次子圏が横的に設定されない限り、天国実現の出発が不可能です」(13ページ)
「40年を越えて迎えるこの時に、先生を中心にした世界史的カインの長子圏を立てなければなりません。……長子圏は先生の家庭で立てなくてはならないというのです。……長子圏の出現が孝進君を通して成るようになるのです」(16~17ページ)
「長子は父の代身として、仕事の責任を負わなくてはならないからです」(18ページ)
「長子として、CARP運動の第一線に立たなくてはなりません」(26ページ)
「1945年から40年を越えた1985年8月16日、41年目の初日の朝を迎えました。……息子を中心にして祈祷するというこの時が、歴史的時間であるということを知らなくてはならないのです。私は孝進に尋ねるが、これからはお父さんの代わりに、この統一家のいかなる食口にも負けないように、中心的長子の責任を果たして行かなければなりません」(37ページ)
1985年8月16日の「一勝日」とは、真のご家庭の長男である文孝進様を通して真の父母様の息子・娘たちが「長子圏」であり、統一教会の二世たちが「次子圏」として設定され、「天国実現の出発」となっていく歴史的な時間でした。また、お父様は、孝進様に対して「中心的長子の責任」を果たすように願われました。
以上の抜粋したみ言を整理すると、「長子」とは、「先生の息子、娘です」とあり、また「父母様の息子・娘たちが長子圏」だとも語られました。そして孝進様に対して、その「中心的長子」の責任を果たすように願っておられました。
それゆえ、1984年に文孝進様がWorld CARPの世界会長に就任されたことは、お父様が「入監以前に孝進君を立てて、……先生の長男としての立場で責任を持たせた」と語っておられるように、「長子圏」の立場において、「長子」の責任を果たすことであり、そして1998年に文顯進様が家庭連合の世界副会長に就任したこと、さらに2008年に文亨進様が家庭連合の世界会長に就任したこと、および2015年に文善進様が家庭連合の世界会長に就任したことも、その全ての出来事が、「父母様を中心にして一つになった基準」の息子・娘という「長子圏」の立場において、「長子」の責任を果たすことを願っておられたものであると理解することができます。
『統一教会の分裂』が述べている、文善進様が「家庭連合の世界会長に就任」されたことに対して、それを「韓鶴子の母系血統による統一教会統治」だとか、「韓鶴子は血統信仰に基づいた後継者選択を放棄した」と批判することは、お父様のみ言に対する〝不従順〟〝反逆〟であり、真の父母様を否定する〝背信行為〟と言わざるを得ません。
UCI側の主張は、〝誤った摂理観〟のゆえになされている真の父母様に対する冒涜行為であり、み言に対する〝無知〟によって生じた言動と言わざるを得ません。
(2)「真のお母様が顯進様を追放した」という虚偽の主張
『統一教会の分裂』239ページには、「韓鶴子と文亨進、文國進が共謀して文顯進を追放」したと書かれており、彼らの述べる「追放劇」とも呼ぶべき〝虚偽のストーリー〟がさまざまに記述されています。以下、『統一教会の分裂』から引用します。
「創始者の指示に従って遂行した文顯進のGPF活動の成功が、却って文顯進反対勢力を刺激し結集させる触媒剤になったという事実と、GPF活動の絶頂期に文顯進が完全に追放されたという事実は、統一教会の分裂と悲劇の本質が何なのかを現わしている。文顯進反対勢力が文顯進を追い出す為に展開するドラマのような過程において特に注目すべき事件は、……『束草霊界メッセージ事件』である」(107ページ)
この『統一教会の分裂』の主張は〝虚偽のストーリー〟であり、誤りです。
『統一教会の分裂』が述べる「束草霊界メッセージ事件」とは、2009年3月8日に韓国の束草市にある「天情苑」の訓読会で起こった出来事を指します。『統一教会の分裂』は、2009年3月頃は「GPF活動の絶頂期」であったと述べていますが、その当時、真のお父様はGPF活動に対し強く懸念しておられました。以下、『マルスム選集』を引用します。
「先生が生きているのに、『先生の話を聞くべきか、聞くべきでないか?』と、そうしています。『UPFではない。GPFだ!』と(彼らは)言いますが、『GPFでもなく、GPAでなければならない』という先生のみ言を理解しません」(マルスム選集609-47、2009年3月5日)
「朴ジョンヘ、ラスベガスでUPFとGPFの中で、どこに責任があるのか尋ねた時、私が叱ったでしょう? 叱られたのを覚えているの? 組織が二つですか? 二つがどこにあるのですか? 朴ジョンヘ! 叱られたのを覚えているの、覚えていないの? 金炳和! 叱ったことを理解できたの、理解できなかったの? 答えてみなさい! 誰の責任だと尋ねることができますか? 先生の責任であるべきです!」(同609-121~122、2009年3月8日)
「GPFとUPFを先生が右手と左手に持っているのに、誰に責任があると言うのですか」(同609-131、2009年3月8日)
これらのみ言を総合的に要約すると、2009年当時、北米大陸会長だった金炳和氏に対して、お父様は「GPFとUPFを先生が右手と左手に持っている」「組織が二つですか? 二つがどこにあるのですか? ……誰の責任だと尋ねることができますか? 先生の責任であるべきです」と語られ、UPFとGPFの組織は、一つであるべきであるにもかかわらず、二つになっている。責任は、先生が持つべきものであると忠告しておられます。
また、「先生が生きているのに、『先生の話を聞くべきか、聞くべきでないか?』と、そうしています。『UPFではない。GPFだ!』と(彼らは)言いますが…」と語られた内容を見ても、お父様が創設されたUPFと、文顯進様が中心となって行うGPF活動との間に不協和音が生じていた事実が分かります。また、お父様が「『GPFでもなく、GPAでなければならない』という先生のみ言を理解しません」と語っておられることを見ても、お父様はGPFが進むべき方向性について懸念しておられたのです。
したがって、2009年3月当時のお父様のGPF活動に対する評価は、『統一教会の分裂』が言うような「創始者の指示に従って遂行した文顯進のGPF活動の成功」や「GPF活動の絶頂期」といったものとは全く逆であったのであり、むしろお父様は文顯進様の活動の方向に対して強く危惧しておられたのです。
さらに、『統一教会の分裂』は、「束草霊界メッセージ捏造事件」と彼らが呼んでいる出来事について、次のように述べています。以下、引用します。
「創始者は『霊界の実相を背景に人事措置と、革命的提案をしなければならない』とし、『文孝進霊界書信』と『訓母様霊界報告書』を読むように催促した。金孝南訓母の代わりに司会を務めていた梁昌植が、韓鶴子から報告書を伝達されて読んだ」(149ページ)
「特に束草霊界メッセージ事件の場合、創始者を完璧に欺く為に……文顯進除去の巧妙な道具として利用したというのが正に、束草霊界メッセージ捏造事件であった」(152ページ)
そもそも、この時、お父様を中心として束草における「集会」が開かれたのは、米国にいた顯進様側がお父様のご意向に反して米国教会理事会構成員の変更を強行しようとしたという大事件があったからです(米国教会理事会乗っ取り未遂事件)。この重大事実に触れずして束草で読み上げられた報告書に問題があるかのごとく主張するのは〝論点のすり替え〟に他なりません。また、報告書にまつわる彼らの上記主張自体も、以下に見るとおり偽りに満ちたものとなっています。
彼らの上記主張には、大きく見て三つの誤りがあります。一つ目は「訓母様霊界報告書」という言葉であり、二つ目は「梁昌植が、韓鶴子から報告書を伝達されて読んだ」という説明であり、三つ目は「束草霊界メッセージ捏造事件」という表現です。
まず、「訓母様霊界報告書」というのは誤りであり、正しくは「訓母様の報告書」としてマルスム選集の609巻123ページに記録されているものです。では、この「訓母様の報告書」とは、誰がどのようにして作成したものなのでしょうか。まず、その事実と背景について、明確に知らなければなりません。
前述したように、この時、お父様を中心として束草における「集会」が開かれたのは、顯進様側による「米国教会理事会乗っ取り未遂事件」という大問題が起こったためでした。彼らの言う「束草霊界メッセージ捏造事件」という表現は〝論点のすり替え〟です。
2011年当時、北米大陸会長だった梁昌植氏が、2011年11月20日に「2009年3月8日、束草報告書」と題する文章を書いています。梁昌植氏が書いたその「報告書」(日本語訳)の資料の一部を以下、引用します。
「2005年に真の父母様の命令によって南北米総責任者として任命を受けた文顯進様の指導下にあった米国において、2008年7月29日に文仁進様が米国教会の協会長に任命となり、二者間の役割と権限に関する混沌があり、これを当時、北米大陸会長の金炳和会長が緊急事案として、当時、韓国協会長だった本人(注、梁会長)に、『お父様に直接問い合わせ、正確な答えを要請』してきました。
(そこで)束草集会の数日前に、主要幹部が真の父母様を迎えてマリオットホテルの食堂で昼食時に集まった席で、本人(注、梁会長)がお父様に米国側の質問を直接報告し、お父様から(それに対する)明らかな答えを受けてメモしたものを整理した内容(が「訓母様の報告書」)です」(12~13ページ)
「2、3日後に父母様が……マリオットホテルの昼食時で明らかにされた内容を再整理しなさいとの命令を本人(注、梁会長)が受けて、直ちにメモしたノートを報告書形式として作成し差し上げたのです。……この内容をお父様が直接確認、訓読されて、翌朝(3月8日)の公開席上で発表するように命じられました」(13ページ)
「3月8日朝……敬拝後、お父様は直ちに訓母様に、訓母様が手に持っておられた黄色い『封筒を梁昌植会長に渡して読むように』と命令されました。当時、一番前の席の右側に座っていた本人(注、梁会長)は、訓母様から渡された封筒を開いて訓読を始めました。初めのページには孝進様のメッセージがありました。そして同じ封筒の中に真の子女様たちの使命に対するお父様の指示事項(のメモを私がまとめた「報告書」)、この整理された内容がありました。……本人(注、梁会長)が父母様の命令によって3月6日頃に作成して報告差し上げた内容そのままでした。孝進様のメッセージは……霊界メッセージとしなければならないでしょう。……(しかし)二番目の内容は霊界で作成したものでなく、当時、協会長として公的な命令を受けて本人(注、梁会長)が作成して父母様に差し上げた『報告書』の内容です。したがって、この内容は霊界とは全く関連がないことを(ここに)あきらかにするものです」(16ページ)
以上の梁昌植氏の報告内容をまとめると、お父様が梁昌植氏に「読みなさい」と命じられた、訓母様が手に持っていた黄色い「封筒」の中には、二つの報告書が入っていたのです。一つは、「孝進様が霊界から送られた書信」と、もう一つは梁昌植会長が作成した「報告書」(訓母様の報告書)です。その封筒を、梁昌植氏は訓母様から受け取り、梁氏が代読したのです。
「孝進様が霊界から送られた書信」は、その前日の3月7日の訓読会で、訓母様が「私が昨日、孝進様から手紙を一つ簡単に受け取りましたが、読んで差し上げましょうか?」とお父様に尋ねて、お父様が「そうだ! そういうものを皆、(地上と)連結しなければならない」(マルスム選集609-81)と語られ、訓母様がその場で、すでに奉読しておられたものです。その孝進様の手紙(「孝進様が霊界から送られた書信 )と、梁昌植氏がまとめた「訓母様の報告書」とが、同じ封筒の中に入れられていたのでした。
事件の当日、お父様は、「決定は皆が集まった場で、霊界の実相報告を、訓母様を通して聞いて、なすのです。霊界に先生の息子が行って総司令官です。……(孝進が)地上で知らずに暮らした者たちを悔い改めさせて、こうして報告した内容が皆あります。それを読んであげなければなりません」(マルスム選集609-111~112)と語られ、梁昌植氏は「封筒」を受け取りました。そして、梁昌植氏に対して、お父様は「ただそのとおりに読んであげなさいというのです。……霊界に相談して祈祷し、訓母様が受けたもののように報告しなさいというのです」(マルスム選集609-115)と促され、梁昌植氏は「封筒」に入っていた二つの内容をそのまま訓読したのです。
『統一教会の分裂』は「訓母様霊界報告書」と書いていますが、マルスム選集にあるように、それは梁昌植氏が書いた「訓母様の報告書」であるにもかかわらず、「霊界」という文字を意図的に書き加えています。さらに、梁会長が書いた「報告書」までも「霊界メッセージ捏造」であると意図的に創作しています。この二つの文書は、すでにお父様が〝承認〟しておられた内容です。特に、梁昌植氏が書いてまとめた「報告書」は、お父様が梁氏に語った内容を梁氏がまとめ、それをお父様ご自身が再度チェックしておられた文書であって、誰かが勝手に「捏造」したという文書なのではありません。あえて言えば、それはお父様が梁昌植氏に代筆させた「指示事項」であり、お父様のみ言なのです。
すなわち、梁昌植氏は、二番目に訓読した「報告書」は、「父母様の命令によって3月6日頃に作成して報告差し上げた内容そのまま」であると述べています。これは明らかに「霊界メッセージ」でもなければ、「捏造」された文書でもありません。
そして、『統一教会の分裂』は「梁昌植が、韓鶴子から報告書を伝達されて読んだ」として、虚偽の説明をしています。梁昌植氏は、「訓母様が手に持っておられた黄色い『封筒を梁昌植会長に渡して読むように』」とお父様がお命じになって、それを読んだのです。
さらに、『統一教会の分裂』151ページには、「金孝南(注、訓母様)は内幕を尋ねる文顯進に対し、自分は文孝進の霊界書信とは無関係」と述べています。しかし、前述したように、束草事件の前日の2009年3月7日に、訓母様はお父様に「お父様、私が昨日、孝進様から手紙を一つ簡単に受け取りましたが、読んで差し上げましょうか?」と尋ねられ、お父様は「そうだ! そういうものを皆、(地上と)連結しなければならない。……明日の朝に私がそこで訓読会に参加するので、準備しなさい」(マルスム選集609-81)と語られ、指示しておられたものです。ゆえに、「金孝南は……文孝進の霊界書信とは無関係」であると主張するのは誤りです。
以上のことを通じて、「文顯進除去の巧妙な道具として利用したというのが正に、束草霊界メッセージ捏造事件であった」という『統一教会の分裂』の説明は、〝虚偽の主張〟に他なりません。
したがって、2009年3月8日の「束草霊界メッセージ捏造事件」が「韓鶴子と文亨進、文國進が共謀して文顯進を追放」した事件であるという主張も〝虚偽の主張〟です。これらの記述は〝誤った摂理観〟のゆえに創作され、顯進様を〝犠牲者〟とし、〝反逆〟を正当化するために書かれたものと言わざるを得ません。
金鍾奭著『統一教会の分裂』は、真のお母様ばかりでなく結果として真のお父様をもおとしめるために事実を歪曲し、捏造して創作された〝歴史的審判〟を受けるべき書籍なのです。
(3)天一国最高委員会は「法統」だと主張する誤り
『統一教会の分裂』では、天一国最高委員会を「法統」であるという、誤った主張をしています。以下、引用します。
「韓鶴子は血統信仰に基づいた後継者選択を放棄した為、いわゆる『法統』という新しいアイデンティティをもって合理化しなければならない」(239ページ)
「真の家庭が意図的に排除された天一国最高委員会……」(274ページ)
また、郭錠煥氏の2016年5月15日の名古屋講演会でも、郭氏が同様のことを述べています。以下、引用します。
「一部UCの中では真の子女様が責任を果たせなければ、真の子女様を除いて、法を中心として、最高委員会をつくればいいのではないか。いわゆる血統ではなく『法統』を言う人がいます」(郭氏の名古屋講演会、「天の血統」4分18秒~4分38秒)
また、櫻井正実氏の「祝福家庭特別セミナー」の第4章「天宙史的葛藤に見られる根本問題」でも、同様の主張がなされています。以下、引用します。
「天宙史的葛藤を起こしてきた3つの勢力があります。腐敗した統一教指導部とお母様と七男様であります。この3つのグループは共通の目的の下に一致団結していました。その共通の目的とは何でしょうか。それは、顯進様を追い出すということです。……これは誰が願うことでしょうか。摂理的長子を潰すということは、サタンが最も願う行動ではないでしょうか。……彼らは『法統継承』のために長子を追放していきました。モルモン教だとかは、創始者の直系子女ではなく弟子たちが継承して発展させていったケースです。同じように、家庭連合も真の父母様の直系子女ではなく、能力のある人が継承しなければならない」(DVD:0分08秒~1分28秒)
これらの主張は、すべて〝誤った摂理観〟に他なりません。
①真のご家庭を中心とした天一国最高委員会
彼らの主張は、天一国最高委員会が「真の父母様の直系子女ではなく、能力のある人」が継承し、「法を中心」とした後継構図を図っていると述べて、「真の家庭が意図的に排除された天一国最高委員会」であると批判しています。
しかし、『天一国憲法(教会法)』の第3章「天一国最高委員会」には、次のように書かれています。以下、引用します。
「第28条(最高議決機関) 天一国は最高議決機関として天一国最高委員会を置く。
第29条(構成) 1.天一国最高委員会は、13名で構成される。
第30条(委員長・副委員長) 1.委員長は真の父母様のご家庭の中から真の父母様が任命し、天政苑の世界会長職を兼ねる事が出来る」
2014年5月12日、真の父母様が主催された第1回「天一国最高委員会会議」が天正宮博物館の3階訓読室で開催されました。真のお母様は、天一国最高委員会の委員長に真の父母様の直系子女である五女の文善進様を任命され、今日まで文善進様が委員長を務めています。
ゆえに、天一国最高委員会は「真の家庭が意図的に排除」された組織であるという主張は事実に反するものです。天一国最高委員会は、真のご家庭を中心とした最高議決機関なのです。
②真の父母様のみ言の具現化が天一国最高委員会
また、郭錠煥氏は、天一国最高委員会は「真の子女様を除いて、法を中心として、最高委員会」であると主張し、批判をしています。
しかし、真のお父様は、2009年3月10日の訓読会で、次のように語っておられます。以下、み言を引用します。
「五権分立として新しい世を造る憲法の条項をすべて作っています。孝律、憲法の草案について知っているの? ……2013年1月13日が終わるとすぐに、その法の通りに生きなければなりません。たくさん話をしましたが、法の通りに生きられない人は離れてしまいます」(マルスム選集609-186~187)
また、『天一国憲法(教会法)解説法源編』(韓国版)の第一部総論には、次のように書かれています。以下、引用します。
「三権分立ではなく言論界と銀行界を含めた五権分立(07.7.11)、今後、立法部・司法部・行政部と銀行・言論界(05.7.20)」(89ページ)
「天一国最高委員会は天一国の最高議決機関であり(28条)、天政苑は天一国の行政権(37条)、天議苑は天一国の立法権(47条)、天法苑は天一国の司法権(59条)、天財苑は天一国の財政権(64条)、天公苑は民意収斂・報道・広報に関する権限(69条)を持つ」(93ページ)
また、「『天一国憲法(教会法)』は真の父母様のみ言に従って、天一国を実体的に定着・完成させる普遍的であり実質的な生活体制と国家の教会体制、そして世界の教会体制を備えるために制定」(4ページ)され、「真のお父様の聖和1周年を迎え、真のお母様は『天一国憲法』を奉呈」(3ページ)されました。
これらのことから、天一国最高委員会に対し、「真の子女様を除いて、法を中心として、最高委員会」といった郭錠煥氏の批判は誤りであることが分かります。天一国最高委員会とは「真の父母様を中心とした真のご家庭が中心の最高議決機関」であり、「『天一国憲法(教会法)』を中心とした最高議決機関」なのです。すべてのことは、真の父母様のみ言に基づいてなされていることなのです。
③真の父母様の直系子女による「継承」のための天一国最高委員会
彼らUCI側は、天一国最高委員会とは「真の父母様の直系子女ではなく、能力のある人が継承」する「法統継承」であると批判しています。さらに、お母様は「『法統継承』のために長子を追放」したとまで主張し、それは「顯進様を追い出す」ためであり、「摂理的長子を潰す」ためだったと述べています。
これは、すでに「長子」に対するお父様のみ言の説明部分で述べたように、〝誤った摂理観〟に基づいた批判であり、また、お父様の「長子」のみ言に対する無理解、〝無知〟に基づいた〝虚偽のストーリー〟にすぎません。
また、天一国最高委員会とは「真の父母様の直系子女様」による継承であって、直系子女様を除外して、能力のある人が継承する「法統」ではないことを説明しました。
では、お母様は「顯進様を追放」するという目的のために「天一国最高委員会」を立てられたのでしょうか?
真のお父様は、1985年8月16日の「一勝日」のみ言で、〝後継〟の問題について次のように述べておられます。以下、引用します。
「これから、先生以後に、孝進の後孫たちがそうするとき、代々に亘って受け継いでいくのです。誰が継代を受け継ぐかという問題ですが、もちろん、長男が受け継ぐのが原則です。しかし、長男がすべてにおいて不足のため、伝統を受け継ぐことができない場合は、兄弟たちを集めた公的会議の場で話し合わなければなりません。兄自身が自己の不足を認め、『家庭の伝統を立てることができないために、誰かが私の代わりに立って欲しい』と願い出るべきです。そのような要請があれば、公的会議または家庭会を開き、全員が祈祷した後に選定されなければなりません。
では、どのような人を選定すべきでしょうか。より犠牲になってきた人、よりアベル的伝統歴史を受け継いだ人。命令だけするのではなく、命令を受ける人に福を与えるための道を行く人でなければなりません」(『祝福』1985年冬季号、20ページ)
〝後継〟の問題に関するこのみ言を整理すると、「誰が継代を受け継ぐかという問題ですが、もちろん、長男が受け継ぐのが原則です。しかし、長男が……伝統を受け継ぐことができない場合は、兄弟たちを集めた公的会議の場で話し合わなければなりません」と語っておられます。
そして、真のお父様は2009年3月10日の訓読会で、「2013年1月13日が過ぎれば、その法の通りに生きなければなりません。……法の通りに生きられない人は離れてしまいます」と語られました。
文顯進様は、2009年3月8日の後、真の父母様のもとを離れてしまいました。さらに、2013年1月13日の「基元節」以降、家庭連合と決別宣言をしました。また、2017年12月2日にはFPA(家庭平和協会)という真の父母様と全く無縁の組織まで立ち上げて、分派活動をさらに強めています。
お父様が「2013年1月13日が過ぎれば、……法の通りに生きられない人は離れてしまいます」と述べられたように、現在の文顯進様は、真の父母様のもとから完全に離れてしまいました。お父様は、「兄弟たちを集めた公的会議の場で話し合わなければなりません」と語っておられるのにもかかわらず、今では、真のお母様や他の真の子女様たちとの話し合いも出来ない状況です。
しかしながら、真の父母様は、文顯進様が一日も早く、本来の位置と状態に戻って来られることを切に願っておられます。
結論を述べると、『統一教会の分裂』が言うような、真のお母様が「『法統継承』のために長子を追放」したというのではなく、文顯進様がお父様のみ言に従わずに、真の父母様のもとから離れてしまったのです。それが真相です。
櫻井正上氏の「書簡」は、金鍾奭著『統一教会の分裂』の〝虚偽のストーリー〟の主張に惑わされ、かつ〝誤った摂理観〟に基づいて書いているものに過ぎません。
私たちは、このような非原理的主張に惑わされてはなりません。